|
|
'80年代初頭、ユーザー側から生み出された“ガレージキット”という模型ジャンルの出現がどれだけ大変な事件だったか、それはその後のキャラクターモデル市場における変化の様子をかえりみれば一目瞭然でしょう。わずか十数年のあいだにガシャポンまで含めた大手マスプロダクツメーカー製品が驚異的なクオリティアップを果たし、いわゆる「ガレージキット的」と称されるような、対象をすさまじいまでの尖鋭的な視点で捉らえた造形がコンビニエンスストアのレベルにまで押し寄せはじめました。
そして、ガレージキットの祭典“ワンダーフェスティバル(以下ワンフェス)”の会場にも、かつてとは比べものにならない技術力で造形された作品があたりまえのように並んでいます。先駆者たちが夢見た光景は現実となりました。ユーザーによるユーザーのための業界革命は、見事成功を収めたのです。
しかし。ワンフェス運営に追われる私たちは、こうしたよろこばしくも輝かしい現実のなかに、あるひとつの不安を募らせていました。その不安はいつしかしぼんで消えるどころか、時間経過と共に膨らみ続け、もはや無視などできない決定的なものへと成長しつつあります。
そして、そうした不安に日々苛まれながら、なんら具体的な策を講ぜずにいた「手にしか脳味噌がついていない」造形馬鹿一代の私たちの前に、私たちと同様の考えに基づくコンセプチュアルなアイディアを呈示してくれたのが、模型文化ライターとして知られるあさのまさひこ氏でした。そのアイディアを具現化するためへの、同氏とワンフェス実行委員会による共同トライアル。それこそが、『ワンダーショウケース』という新たな提案の正体です。
ワンダーフェスティバル実行委員長/(株)海洋堂専務取締役
99年8月8日記
|
|