顔は宇宙だ!
岡本太郎は、「今日の芸術は、うまくあってはならない。きれいであってはならない。ここちよくあってはならない」と主張しました。これは顔についての太郎の考えにそのまま通じます。ていのいい見せかけはダメです。顔は見る人へのメッセージにほかなりません。さらにいえば顔は世界への挑戦状その表情は命の燃焼なのです。
顔の時評
原型制作:寺岡邦明
時計の針は刻々と時を刻む。誰にとっても平等だ。うれしくても悲しくても。つらくても楽しくても逆戻りはない。だからこそ次の瞬間、世界になにを仕掛けるのか,それが問われている。その決意をじっと見つめる無情な顔。
子供の樹 (A) (B)
原型制作:田熊勝夫
子供の顔はなにもしなくても百面相だ。目をらんらんと輝かせたり,かと思えばペロリと舌を出すあっちを向いたりこっちを見たり。ぐるっと逆さまにでんぐりがえる。木登りをする子どもたち。全員まったく違う顔だ!
若い太陽
原型制作:寺岡邦明
太陽がいつもニコニコ顔とは限らない。若ければそのぶん世界とぶつかることも多いだろう、おのれが黄金色に輝くならなおさらだ。だから太郎の太陽はいつもどこか不満げだ。若い太陽には大胆不敵さが似つかわしい。
あしあと (青) (緑)
原型制作:松本栄一郎
足あとに顔があってもいいじゃないか。太郎ならそう言うはずだ。顔は顔だけの特権じゃない。表に顔があるなら裏にもある。裏に顔があるならそれは表でもある。表も裏もない顔で堂々と存在を主張する。太郎の世界だ。
解説/椹木野衣【さわらぎのい】
美術評論家、多摩美術大学教授。著書に岡本太郎論『黒い太陽と赤いカニ』、作品集『岡本太郎爆発大全』(監修)、著作集『岡本太郎の宇宙』(共編·全6巻)など。ほかに岡本太郎賞審査員も務める。